美と健康・・老化科学の最先端研究に学ぶ
- 2025年10月23日
- 2025年10月23日
老化を防止し、寿命を延ばす可能性のある遺伝子の存在が発表されたのは2000年のことでした。誰もが持つ、この長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)の働きは一躍世界の注目を集め、2015年にはNHKでも紹介され、大きな話題になりました。
不老長寿が夢物語ではなくなるサーチュインの働き
はじめは夢物語のようでしたが、その後の研究により、
- サーチュイン(*1)は、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)によって活性化される。
- NADは体内で作られるが、その生産量は年齢と共に衰える。絶食や運動によって増やすことができる。
- NADの前駆体であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を摂取すると体内でNADが増える。
つまり、「NMNの摂取がサーチュインの活性化に繋がる」、ということがわかってきました。これまでの医学に新たな視点が加わり、夢物語が科学になり、現実味を帯びてきたのです。
科学の力が示す人類への福音
先日、NMNのヒトに関する臨床研究の結果が初めて発表されました。(*2)
私はこの発表に、内容とは別の大きな意味を感じました。それは、これまでマウスでしか観察されてこなかったNMNの効果が、ヒトでも見られた、ということです。動物とヒトとは違います。実験動物に効くからといってヒトにも効くとは限りません。
ところが、NMNはマウスと同様の効果をヒトにもあらわしたのです。しかも、マウスよりはるかに少ない量で、短い期間で効果があらわれています。
このようなケースはそう多くないかも知れません。
こうなると、動物実験で見られるNMNのさまざまな効果・・・老化による代謝低下の抑制、認知機能の改善、健康寿命の延伸、などがヒトにも同様にあらわれる可能性が俄然高まってきます。NMNがまた1歩、夢を現実に近づけているように感じています。
進化する「老化研究」の世界
アンチエイジングについては、これまで活性酸素による「酸化=老化」という観点から研究をしてきました。活性水素による活性酸素の制御の有効性も見てきました。
そこに、NMNを用いたサーチュインの活性という新しい視点が加わり、さらに現在、老化を促進する「老化細胞」と、それを減らして老化を抑制しようとする研究も世界中で進みつつあります。
老化研究の世界のトップランナーの1人であるハーバード大学のシンクレア博士の言う『老化を治療する時代』が近づいているのかも知れません。
NMNを中心に、活性水素、NMNと活性水素の相乗作用、老化細胞など、老化とその抑制にかかわる新しい情報がわかりやすくまとめられた本書が、アンチエイジングに興味を持つ方々のご参考になるものと確信しています。
*1…サーチュイン:サーチュイン遺伝子から作られる酵素のこと。
*2…閉経後の糖尿病予備軍の肥満気味なアメリカ人女性(平均年齢48歳、平均体重71kg)13名がNMN250mg を10週間連続で飲んだところ、筋肉のインスリンに対する反応性が上がり、血糖代謝能が上昇した。 Science. 2021 Apr 22;eabe9985.
医療法人社団日新会入澤病院副院長
菊地悦啓
(老化科学の最先端研究に学ぶ 美と健康・・未来の教科書より)