シンクレア教授「若返りと長寿」を語る 生命最古の分子「NMN」が特効薬に

  • 2020年5月20日
  • 2023年7月24日

2020 / 5 / 20

 

◆デビッド・シンクレア(David Sinclair)ハーバード大学医学部教授。長寿や若返り研究の第一人者として知られ、2014年にはTIME誌の「最も影響力のある100人」に選出された

私たち人間の寿命は、1日あたり5時間も伸び続けているという。できるだけ若く、そして健康に長生きすることは人々が等しく持つ夢だが、それを実現してしまうかもしれない研究が発表された――。NHKスペシャル「ネクストワールド 私たちの未来」(NHK総合)の第2回に登場した、若返りと長寿研究の第一人者、デビッド・シンクレア氏へのインタビューをお届けする

若返りの特効薬、「NMN」

今、私は「若返りの薬」の研究・開発をしています。
2年前、研究室で、人間でいえば60歳に当たる生後22カ月のマウスに、「NMN」という物質を投与しました。すると1週間後に、生後6カ月のマウスに相当する筋肉になっていたのです。これは、人間で言えば20歳にあたります。つまり、たった1週間という短期間で、実に40歳の若返りを果たしたのです。実際に、マウスがカゴの中で活発に動いているのが観察されています。しかも、実験の時はマウスに注射で投与したのですが、あとで餌に混ぜても同じ効果があると判明しました。現在は皮膚や脳についても同様の効果があるか、研究を始めています。
NMNにはまだ否定的な面は発見されていません。それどころか、眼の疾患や難聴、肝臓や心臓を守る作用があるとわかっています。また、肝臓がんにかかったマウスたちに投与したところ、腫瘍が消えたこともありました。

 

NMNは「ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド」という分子化合物です。バクテリアからマウス、人間まで、あらゆる生物の細胞に存在しており、生命体が作った最初の分子のひとつだと考えられていて、生命維持に必要なエネルギーを生成するのに必須の分子とも言われています。
このNMNが加齢とともに体内から減少するのが老化の原因だと考えています。NMNが減少すると、身体から修復機能が失われます。筋肉が弱くなるのも、記憶が弱くなるのも、これが一因ではないかと思っています。ですから、体内のNMNの量を若いときと同じレベルに戻そうというのが私たちの目標です。

 

こんなイメージを思い浮かべてください。私たちの体内のたんぱく質には小さな穴があるのです。小さな分子であるNMNはそこに入り込んで、タンパク質を活発な状態にします。具体的には、「サーチュイン」という身体を保護するたんぱく質に入って、活性化します。すると、サーチュインが今度はDNAやほかのたんぱく質にたどり着けるようになり、細胞を修復できるというわけです。

 

参照元サイト: https://toyokeizai.net/articles/-/59077
東洋経済ONLINE ビジネス NEXT WORLD 私たちの未来
NHKスペシャル取材班 2015/02/05 5:00より

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