『LIFE SPAN(ライフスパン)老いなき世界』(東洋経済新報社)でNMNが紹介されました。
- 2020年12月4日
- 2023年7月24日
2020 / 12 / 04
老化研究の世界的権威、ハーバード大学医学大学院のデビッド・A・シンクレア教授が、人類が「老いない身体」を手に入れる未来がすぐそこに迫っていることを示した、全米ベストセラー 『LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界』 より、下文は老化や長寿遺伝子(サーチュイン)、NAD、そして、シンクレア教授自身、毎朝1g摂取していると記されているNMNに関連する記述の一部を抜粋・編集したものとなります。
長寿遺伝子「サーチュイン」
私が主な研究対象にしている長寿遺伝子は「サーチュイン」と呼ばれている。哺乳類では全部で7種類のサーチュイン遺伝子が見つかっていて(SIRT1からSIRT7まで)、これらは体内のほぼすべての細胞でタンパク質(サーチュイン酵素)をつくっている。サーチュインは、必要に応じて遺伝子のスイッチをオフにしたりオンにしたりすることができる。細胞を制御するシステムの最上流に位置して、私たちの生殖とDNA修復を調節しているのだ。
サーチュインは私たちの健康や体力、そして生存そのものを司るように進化してきた。進化の過程で、「NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という分子を用いて仕事をするようになった。加齢と共にNADが失われ、そのせいでサーチュインの働きが衰えることが、老齢に特有の病気を発症する大きな理由の1つと考えられている。
サーチュイン酵素は、老化に伴う主だった疾患(糖尿病、心臓病、アルツハイマー病、骨粗鬆症、さらには癌までも)から私たちを守っている。アテローム性動脈硬化症、代謝異常、潰瘍性大腸炎、関節炎、および喘息へとつながる慢性炎症の亢進を鎮め、細胞死を防ぎ、細胞の発電所ともいうべきミトコンドリアの機能を高める働きももつ。さらには、筋肉消耗や眼の黄斑変性とも闘う。マウスを使った研究からは、サーチュイン酵素を活性化することでDNAの修復が進み、記憶力が向上し、運動持久力が高まり、何を食べてもマウスが太りにくくなるという結果が得られている。
サーチュインの燃料となるNAD
NADは7種類あるサーチュインすべての活動を高めてくれる。NADはナイアシン(ビタミンB3)から生成される。ひどく欠乏すると、皮膚炎、下痢、認知症、皮膚のただれなどが生じ、放置すれば死に至る。しかも、NADは体内で500種類あまりの酵素に利用されているため、NADがなければ私たちは30秒と生きていられない。
1990年代、NADは数々の重要な生体プロセスを調節するうえで鍵を握る物質であることがわかった。そのプロセスには、老化や病気も含まれる。十分な量のNADが存在しなければ、サーチュインはうまく仕事ができない。遺伝子も抑制できず、寿命も長くできない。また、NAD濃度が年齢とともに低下することもわかった。しかもその現象は、脳、血液、筋肉、免疫細胞、膵臓、皮膚など全身で見られ、微細な血管の内側を覆う内皮細胞でさえ例外ではなかった。NADは、それだけ多くの重要な細胞プロセスで、これだけ中心的な役割を果たしている物質なのである。
NADを増加させるNRとNMN
ビタミンB3の一形態であるNR(ニコチンアミドリボシド)が、きわめて重要なNADの前駆体(生化学反応で特定の生成物の前の段階にある一連の物質)の1つであることが2004年発見された。一方、NRとは別の前駆体であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)に狙いを定める学者もいる。私たちもそちらのグループだ。NMNは、人間の細胞内でもつくられているし、アボカド、ブロッコリー、キャベツなどの食物にも含まれている。
体内では、NRがまずNMNに変換され、次にそれがNADに代わる。NRかNMNを入れた飲み物を動物に与えると、体内のNAD濃度はそれから2~3時間で約25%上昇する。まるで、それまで絶食か相当な運動をしていたかのような上がり方だ。
2011年には、NMNがNAD濃度を回復させることで、高齢マウスの2型糖尿病のいくつかの症状を治療できることが示された。その後、高齢マウスにNMNの注射を1週間続けただけで、ミトコンドリアが若いマウスのものと比べて遜色なく機能するようになることを見出した。また、NMNが高齢マウスに若いマウス以上の持久力を与えられることも発見した。NMNは、たんに高齢マウスをウルトラマラソンのランナーに変えるだけではなく、平衡感覚、協調運動能力、俊敏さ、体力、記憶力を調べたところ、NMNを使ったマウスと使わなかったマウスとの違いは目を疑うほどだった。
『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』特設サイト https://book.toyokeizai.net/lifespan/